雄と雌「逆転」の虫を研究、日本人らにイグ・ノーベル賞

写真・図版雄と雌が逆転の虫 トリカヘチャタテ

人々を笑わせ、考えさせた業績に贈られる「イグ・ノーベル賞」が14日、米国ハーバード大で発表され、日本人らの研究チームが「生物学賞」を受賞した。日本人の受賞は11年連続。チームは男女の入れ替わりを描いたヒット映画「君の名は。」を思わせるような、雌雄が「逆転」した昆虫について研究した。

受賞したのは吉澤和徳・北海道大准教授(46)、上村佳孝・慶応大准教授(40)、海外の研究者のチーム。ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明した。性差とは何かを考えさせるとして、研究が評価された。

この虫は体長約3ミリで、日本では住宅など身近な場所にいる「チャタテムシ」の仲間。吉澤さんは和名を「トリカヘチャタテ」と名付けた。男女の入れ替わりを描いた平安時代の古典「とりかへばや物語」からとった。

トリカヘチャタテは2010年以降に新種として登録された。吉澤さんらは生態を詳しく観察し、40~70時間と長時間にわたる交尾で、実際に雄雌の交尾器官が「逆転」して機能することを解明。14年に論文で発表した。

世界中にチャタテムシは約5千種いるが、交尾器官が逆転したトリカヘチャタテの仲間はブラジルの洞窟にいる4種だけ。魚類など性別自体が変わる生き物はいるが、このような生き物は知られていないという。

「逆転」の理由について、吉澤さんらは交尾の際、雄が精子と一緒に栄養分を雌に渡すことに着目。この栄養分を得るため、雌が進んで交尾をコントロールできるよう進化したのではないかと考えている。(森本未紀、小堀龍之)

イグ・ノーベル賞〉 ユニークな科学研究を紹介する米国の雑誌が1991年、面白いが埋もれた研究業績を広めようと始めた。賞の分野は様々で、賞金は原則出ない。授賞式は米国のハーバード大であり、「本家」ノーベル賞の受賞者らも出席する。生きたカエルを宙に浮かせる実験で2000年のイグ・ノーベル賞を受賞したアンドレ・ガイム氏は、10年にノーベル物理学賞も受けた。

■今年のイグ・ノーベル賞の主な受賞研究

ネコは固体にも液体にもなれることを流体力学で証明(物理学賞、仏)▽生きたワニとの遭遇がギャンブル嗜好(しこう)性に与える影響(経済学賞、豪州)▽医学研究「なぜ老人の耳は大きいか」(解剖学賞、英)▽吸血コウモリが人間の血液を吸っていた初の科学的報告(栄養学賞、ブラジル)▽チーズに吐き気をもよおす人の脳の状態を測定(医学賞、仏)

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