シャンゼリゼ発砲 容疑者は「対テロ捜査の対象だった」

パリのシャンゼリゼ通りでは厳戒態勢が敷かれた(20日)

パリのシャンゼリゼ通りでは厳戒態勢が敷かれた(20日)

フランス警察によると、パリの中心繁華街シャンゼリゼ通りで20日夜、男が警察車両に向けて発砲し、警官が1人死亡、2人が負傷した。逃亡しようとする男を、警察が射殺。男は以前から警察の対テロ捜査の対象になっていたという。

捜査当局は、男が乗りつけた自動車に残された書類から身元を特定したが、まだ公表していない。

仏メディアは、容疑者はパリ郊外に住む39歳で、以前からイスラム過激主義者の可能性があるとして捜査線上に浮上していたと伝えている。また2000年代初めには、警官に発砲した罪で有罪となり数年服役したことがあるという。

仏内務省のピエール=アンリ・ブランデ報道官は、「警官を意図的に狙った犯行のように見える」と述べた。報道官によると、午後9時直前に乗用車が警察人員輸送車の前で停車。降りた男が自動小銃で警察車両に発砲したという。

男は警官1人を殺害した後、他の警官に向けて発砲しながら走り去ろうとした。警官2人が負傷し、治安部隊が男を射殺したという。

フランソワ・オランド仏大統領は、「テロ関連」の攻撃だと確信していると発言した。大統領は首相や内相と緊急会議を開き、犠牲になった警官を国として追悼する方針を伝えた。21日にも緊急閣議を開く方針という。

パリのフランソワ・モラン検察官は、「犯人の身元は特定できているが、公表しない。捜査や家宅捜索が進行中で、共犯がいるかどうか確認する必要がある」と話した。

シャンゼリゼ通り周辺をパトロールする武装警官(20日)Image copyright AFP
シャンゼリゼ通り周辺をパトロールする武装警官(20日)

一方で、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)はアマク通信を通じて、自分たちの「戦闘員」による攻撃だと犯行声明を出し、実行犯は「アブ・ユスフ・アル・バルジキ」だと明らかにした。

世界的に有名なシャンゼリゼ通りは観光客も多く、かねてからテロ攻撃の標的になるのではと懸念されていた。

パリで取材するBBCのヒュー・スコフィールド記者によると、シャンゼリゼ通り全体が封鎖され、ジョルジュサンク地下鉄駅周辺では警察車両が並んだ。

通りに面する小売り大手マークス・アンド・スペンサーの店舗近くから銃声が聞こえ、観光客や通行人が慌てて走り出すなど混乱状態に陥った。

AFP通信によると、現場近くのレストランでは「客を地下室に避難させた」とマネージャーが話していた。

 

大統領選目前

23日に大統領選の第1回投票が行われるフランスでは、イスラム過激主義が大きな争点となっていると、各種世論調査が示している。AFP通信によると、フランスでは2015年以降、238人以上がイスラム聖戦主義の攻撃で死亡している。

事件は、11人の大統領候補がテレビに生出演している最中に発生した。

中道右派候補のフランソワ・フィヨン氏はツイッターで、「我々を守るために自分の命を捧げる治安部隊に敬意を表する」と書いた。極右「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン党首はツイッターで、「またしても標的にされたこの国の治安部隊に同情するし、応援したい」と書いた。

ル・ペン氏とフィヨン氏は共に、被害者に敬意を示すため、選挙戦最終日となるはずだった21日の予定イベントを中止し、選挙活動を早く打ち切ると発表。フィヨン氏は、他の候補にも選挙活動を終えるよう呼びかけた。

無所属中道派のエマニュエル・マクロン氏はテレビ出演中、国民を守ることが大統領の「第一の義務」だと述べ、警察との「連帯」を表明した。

左派候補のジャン=リュック・メランション氏はツイッターで、「殺害された警官と負傷した警官たち、そして家族の皆さんに思いを強く寄せている。テロ攻撃は必ず処罰するし、共犯は決して忘れない」と書いた。

パリとその周辺の観光名所は普段から、何千人もの兵士と警察が警備している。今年2月にはルーブル美術館の売店入口を警備する治安部隊兵士が、大刀を持った男に襲われ負傷した。3月にはオルリ空港で、39歳男性が警備中の兵士を襲撃して射殺された。

ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで、「フランスの人たちに、この国からお悔やみを申し上げる。またしてもテロ攻撃のようだ。なんともはや……ひたすらキリがない」と話した。

英首相官邸は「英国はパリの恐ろしいテロ攻撃を強く非難する。首相は、オランド大統領にお悔やみをお伝えした」とコメントを発表した。

アンゲラ・メルケル独首相は、「力強く決然と」フランスを支えると述べた。


<解説> 大統領選への影響は カティヤ・アドラーBBC欧州編集長

安全保障や移民やイスラム原理主義に対して、しきりに声高に主張してきたマリーヌ・ル・ペン氏が、この事件によって有利になると判断するのは簡単だ。

しかし、状況に不安を抱く有権者は代わりに、経験豊かな保守政治家のフランソワ・フィヨン元首相を頼りにするかもしれない。

これまでのところ世論調査によると、4人の主要候補が伯仲する激戦状態だが、まだ何百万人もの有権者が誰に投票するかを決めかねている。

この攻撃がどの程度、選挙結果に影響するか、見通すのは難しい。しかし中道派のマクロン氏と左派のメランション氏は、自分が決して外交や安全保障が得意な候補とは見られていないと、十分すぎるほど自覚しているはずだ。


(英語記事 Policeman and suspected gunman shot dead in Paris ‘terror attack’

BBC NEWS

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